大阪地裁平成20年1月30日判決

呉服販売業者における,いわゆる「従業員商法」の事案において,従業員に対して呉服等の自社商品を販売した行為が,従業員の支払能力に照らして過大であること,売上ノルマを課したり,制服として着物の着用を義務づけるなど購入を事実上強要していること等から,取引の一部について公序良俗に反するとして無効とした。
 

販売会社に対しては,割販法30条の6,8条5号の適用除外規定(事業者の従業員に対する販売)の適用を認めず,抗弁対抗を認めた。

判決文を引用します。

 「同法(※割販法30条の6,8条5号)が,従業員に対して行う割賦販売を抗弁権接続の規定の適用除外とした趣旨は,事業者の内部自治を尊重するところにあると解せられる。しかしながら,本件では,前記2のとおり,被告奈良松葉が,従業員である原告に対し,原告の支払能力を超えることを知りながら売買を繰り返させていたところ,それが従業員に対する販売目標達成の徹底を強く求めるといった同被告の営業方針ないし労働環境に起因していたのであるから,このような場合にあっては,一般顧客と従業員とを区別して事業者の内部自治を尊重すべき理由は全くない。

  したがって,原告は,同法30条の4に基づき,被告信販会社に対して本件売買契約3ないし6,8ないし18が公序良俗に反して無効であることをもって,被告信販会社の履行請求を拒むことができるというべきである。
   なお,本件立替払契約14は,2月以上の期間にわたり,かつ3回以上に分割して売買目的物の金額を受領するものではなく,割賦購入あっせんに該当しない(同法2条3項2号)。しかしながら,本件売買契約14が公序良俗に反して無効であるという事情や,同時期に繰り返された他の本件売買契約に基づく立替金債務の履行請求は拒む事ができるという事情に照らすと,信義則上,本件立替払契約14の履行請求についてもこれを拒むことができると解するのが相当である。」