大阪地裁平成18年9月29日判決

高齢者(後に成年後見)に対する呉服等の過量販売の事案において,販売金額の異常性や判断能力の低下に付け込んだ販売であること等を理由に,一部の取引について公序良俗に反するとして無効とした。クレジット契約については,公序良俗違反を否定した。

 「原告と被告信販会社らとの弁済未了の本件立替払契約のうち,契約番号(略)の各契約は,支払回数が1回又は2回であるため,割賦購入あっせんには該当せず,上記割賦はない法30条の4第1項の適用はなく,信義則に反するというに足りる事情が認められるか否かが問題となる。
 前記のとおり,被告信販会社らは,被告A(販売店)らと加盟店契約を締結し,従業員をその展示即売会場に派遣し,立替払契約の締結業務にあたらせていたのであって,当然,被告Aらの販売体制を知っていた又は知り得たものと認められる。
 すなわち,前記のとおり,被告Aらは,元来顧客であった者を外交員にして,歩合報酬をもって,その友人,知人を勧誘させて,展示即売会場に来場させ,呉服,寝具といった高額商品につき,その場で購入を決断させ,信販会社による立替払を利用させて,代金回収を図るという販売体制をとっていたのである。
 かかる販売体制が直ちに不当なものであるとはいえないものの,一般の店舗販売に比べ,指導・監督の行き届きにくい素人の外交員において,不相当な勧誘行為がされ,顧客の財産状況に照らして過大な販売が行われるという事態が起こりやすいといえる。
 そして,クレジットのメカニズムないしシステムにより利益を挙げている信販会社には,そのような販売体制の濫用により,消費者が被害にあわないように注意する,いわば,システム管理の責任(原告の主張によれば,加盟店管理責任)があるといえる。
 それにもかかわらず,被告B(信販会社)及び被告C(信販会社)がこの責任について,何らかの調査や対応をしたという事実は全く窺われない。
 それどころか(略・信販会社の与信状況について)・・・
 それにもかかわらず,被告オリコ及び被告ライフは,原告が大正14年生まれの高齢であることを知りつつも,原告の収入,財産状況等につき,慎重な審査を行うことなく,結果として,多額の与信を実行している。
 かかる状況に照らせば,立替払契約が公序良俗に反するとまではいえないまでも,被告B及び被告Cは,被告Aらが原告に対し,不相当な販売方法で,原告の財産状況に照らし,過剰な商品を販売していることを知らないまま,立替払契約を締結したことにつき,過失があったと認められ,信義則上,原告において,被告B及び被告Cに対する立替払債務の弁済を拒めるという特段の事情があるといえる。
 したがって,原告は,信義則に基づき,被告信販会社らに対し,上記立替払契約に係る本件売買契約が無効であることを対抗することができ,上記立替払契約に基づく割賦金の支払を拒絶することができる。」