東京高裁平成25年6月11日判決

原告は,被告が運営する出会い系サイトでサクラを使って欺罔されてサイトを利用,入金させて損害を生じさせた(被害額約2000万円)として,不法行為による損害賠償請求,公序良俗違反無効・不当利得返還請求を求めて,訴訟を提起した事案です。

原審である横浜地裁平成24年6月11日判決は,

「不法行為として主張する被告の行為,さくらと称する者の原告に対するメールの送信日時及び内容,これによって生じた原告の誤信の内容,誤信に基づく被告への送金ないしポイント購入の時期及び金額は特定されておらず,更に,さくらと称する者と被告との関係等については,その主張上,全く明らかではなく,主張自体が失当であるといわなければならない。」

「当該利用規約に基づく被告の利用料の請求が公序良俗に反することを基礎付ける事実として原告が主張するのは,いずれも,本件以外の事案に関する苦情や報告であって,本件に関わるものではないから,主張自体が失当であるといわざるを得ない。」

などと述べて原告の請求を棄却しました。

これに対し,控訴審である本判決は,以下の様に述べて,原判決を取り消し,控訴人(原告)の請求を全て認容しました(逆転勝訴)。

(一)(略)本件各相手方等からの申し出は,見も知らない控訴人に対し,指示に従えば数百万円ないし数千万円という多額の現金を供与する,面談や実験対象となってくれれば相当の対価を支払う等,あり得ない不自然な話で,そのいずれについても全く実現していないのであり,本件各相手方等がこれを実現する意思,能力を有していないことは明らかである。

(二)次に,本件各相手方は,控訴人に対し,(略)などを行わせているが,これらの指示に合理性は見いだしがたく,その目的は,いずれも控訴人にできるだけ多くのポイントを消費させ,被控訴人に対し,利用料金名下に高額の金員を支払わせることにあることは明らかである。
    そして,高額な利用料金を支払わせることによって利せられるのは被控訴人においてほかにない(略)。
     したがって,控訴人が本件各サイトにおいてメール交換した本件各相手方等は,一般の会員ではなく,被控訴人が組織的に使用している者(サクラ)であるとみるほかない。
 (三)以上によれば,(略)詐欺に該当するものというべきである。被控訴人は,控訴人に対する不法行為責任を免れることはできない。