京都地裁平成25年5月23日判決

1 事案の概要

原告2(16歳)が父親である原告1の財布から被告5のクレジットカードを盗み出し,そのカードを利用して被告1~4の経営する付属営業店(キャバクラ)で豪遊した。

   被告5からカード利用代金550万7426円の請求を受けた原告1は,被告1~4に対し,原告2の法定代理人として,

  ① 原告2と被告1~4の接客契約の未成年取り消し

  ② 原告2と被告1~4の接客契約の公序良俗違反無効

   を主張し,

   更に,原告1は,被告5に対し,

  ③ 信義則に基づきカード利用代金の請求を拒絶する

   旨主張して訴訟を提起した。

   なお,被告5のカード会員規約7条3項2号には,上記長崎地裁佐世保支部判決と同様に,家族が窃盗犯人である場合には会員を免責しない旨の規定があった。

 2 判決内容

  ① 被告1~4に対する未成年取り消しを認めた。

② 被告1~4との間の契約の一部(476万5056円)について公序良俗に反し無効とした。

③ 被告5のカード利用代金請求については以下の様に述べて一部(上記公序良俗違反になる金額)について請求を拒絶できるとした。

 「そもそも,信販会社には,カード不正使用の不利益からカード会員を保護するため,信義則上,不正使用の可能性がうかがわれる一定の場合,カードの使用者が本人かどうかを確認するための合理的な手段をとり,本人確認の状況が疑わしい場合にはカード決済を暫定的に見合わせる程度の義務は負うものというべきである。なお,上記にいう加盟店には,被告5にとっての本件各店のように業務提携先の加盟店である場合も含まれるといわなければならない。直接の加盟店と業務提携先加盟店とで上記義務の有無に違いが生じるとすべき根拠も見あたらないからである。」

 「そして,信販会社の義務が十分に果たされずに不正使用が拡大し,しかも,窃盗犯人と加盟店との間の原因契約が公序良俗に反するという場合,裁判所としては,加盟店の公序良俗違反行為に対する寄与の度合い,信販会社による本人確認の状況等の諸事情を総合的に考慮し,不正使用による損害を会員に転嫁することが容認し難いと考えられる場合は,本件契約7条ただし書きに基づく会員に対するカード利用代金請求が権利の濫用となる(あるいは信義則に反する)として民法1条2項ないし3項に基づく公権的解決を図ることができると解すべきである。」